福岡地方裁判所 昭和56年(わ)236号 判決 1981年7月08日
本籍
大韓民国慶尚南道馬山市斗月洞壱街参番地
住居
福岡県飯塚市片島一丁目五番五五号
遊技場、飲食店経営
金海又安こと
金又安
西歴一九二三年一一月二五日生
右の者に対する所得税法違反被告事件につき、当裁判所は検察官塩谷安男出席のうえ審理を遂げ次のとおり判決する。
主文
被告人を懲役二年及び罰金三、〇〇〇万円に処する。
右罰金を完納できない時は金五万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。
本裁判確定の日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は福岡県飯塚市吉原町七番三号ほか五か所において「明治会館」等の名称でパチンコ屋及び飲食店等を経営するものであるが、自己の所得税を免れようと企て、パチンコ等の売上げの一部を除外し、簿外預金を設定するなどの方法により所得を秘匿したうえ、
第一 昭和五二年分の実際総所得金額が六〇、四六六、六四五円あったのにかかわらず、昭和五三年三月一五日、飯塚市新立岩一一番四五号所在の所轄飯塚税務署において、同税務署長に対し、同年分の総所得金額が一三、八四〇、〇三三円でこれに対する所得税額が三、五八一、三〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により同年分の正規の所得税額三一、一三六、三〇〇円と右申告額との差額二七、五五五、〇〇〇円を免れ
第二 昭和五三年分の実際総所得金額が七三、三四三、二七九円あったのにかかわらず、昭和五四年三月一五日前記飯塚税務署において、同税務署長に対し、同年分の総所得金額が一九、七四〇、七〇二円でこれに対する所得税額が六、五八七、五〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により、同年分の正規の所得税額四〇、三三九、九〇〇円と右申告税額との差額三三、七五二、四〇〇円を免れ
第三 昭和五四年分の実際総所得金額が一三一、五三七、〇八二円あったのにかかわらず、昭和五五年三月一五日、前記飯塚税務署において、同税務署長に対し、同年分の所得金額が一四、六五四、〇〇六円でこれに対する所得税額が四、三三九、一〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により同年分の正規の所得税額八三、九八六、〇〇〇円と右申告税額との差額七九、六四六、九〇〇円を免れ
たものである。
(証拠の標目)
判示全事実につき
一、被告人の当公判廷における供述
一、検察官証拠等関係カード番号16、20ないし40、42ないし55、59ないし89の各書証
一、押収にかかる所得税青色申告承認申請書一葉(昭和五六年押第一四三号の一)
判示第一、第二の事実につき
一、同カード番号41の書証
判示第一の事実につき
一、同カード番号17の書証
一、押収にかかる五二年分所得税青色申告決算書一綴、同年分不動産所得の経費領収証一綴、同年分所得税確定申告書一綴、同年分所得税青色決算書一綴(昭和五六年押第一四三号の一、二、六、九)
判示第二の事実につき
一、同カード番号18の書証
一、押収にかかる五三年分所得税青色申告決算書一綴、同年分所得税確定申告書一綴、同年分所得税青色決算書一綴(同号の三、七、一〇)
判示第三の事実につき
一、同カード番号19の書証
一、押収にかかる五四年分所得税青色申告決算書二綴、同年分所得税確定申告書一綴、同年分所得税青色決算書二綴(同号四、五、八、一一、一二)
(法令の適用)
被告人の判示各所為はいずれも所得税法二三八条に該当するが、所定刑中懲役刑と罰金刑を併科し、なお罰金額については情状により同条二項を適用した額によることとし、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、懲役刑については同法四七条本文、一〇条により最も犯情の重い判示第三の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で、罰金刑については同法四八条二項により各罪所定の罰金の合算額の範囲内で、被告人を懲役二年及び罰金三、〇〇〇万円に処し、右の罰金を完納することができないときは、同法一八条により金五万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置することとし、情状により同法二五条一項を適用してこの裁判確定の日から三年間右懲役刑の執行を猶予することとする。
よって主文のとおり判決する。
(裁判官 赤塚健)